千島海溝沿いで続発する大規模地震



要旨

 北海道からカムチャツカ半島にかけた千島海溝沿いでは,大規模地震が繰り返し発生しています。 ここでは,この地域の1890年以降の大規模地震が続発する地震活動に着目し,Mw(※1)7.70 以上の大規模地震が3年以内で500km以内に続発する事例を抽出しました。 1893年6月Mw 7.70 と1894年3月Mw7.90,1918年9月Mw8.10と11月Mw7.83,1963年の本震Mw8.50最大余震Mw7.80,1994年10月Mw8.26と1995年12月Mw7.88,2006年11月Mw8.30と2007年1月Mw8.11の5組の同程度の規模の続発する大規模地震が発生していることが分かりました(図(a))。 この調査には,国際的な地震のデータ機関であるInternational Seismic Centerのデータを利用しましたが,1918年9月と11月の地震については,震源決定の結果に不安定さが見て取れました。 そこで,当時の地震記象紙の記録に戻って,地震のP波とS波の到着時間差(S-P時間)を読取り,震源再決定を行ったところ,これらの地震は海溝軸の内側に震源が決まりました(図(b))。 これらの地震は2006年の地震と1963年の地震の間で大規模地震が続発していたと考えられます。

  • (a)
  • (b)

.(a)千島海溝沿いの1890-2014年の震源分布。赤×がMw7.7以上で続発する地震,青×がそれ以外のMw7.7以上の地震,黒×は日本海溝の地震で,大きい黒×は2011年東北地方太平洋沖地震です。 緑×は1918年9月と11月の地震の震源のデータが不安定で震源決定作業によって異なっていました。 水色は背景的な地震活動を示しています。ピンク色の線はプレート境界です。 (b)1918年9月と11月の地震の震源再決定。 S-P時間を用いて,震源推定を行いました。点線の円は,それぞれの観測点からS-P時間から震源の可能性のある位置を示しており,それらの円がよく重なったところが,震源(☆印)と推定されます。 赤が1918年の9月,青が11月の地震に対応します。

学術雑誌名など発表した媒体の情報

雑誌情報: Journal of Disaster Research, 17, 1059-1067 (2022)
タイトル: Successive Occurrence of Large Earthquakes Along the Kuril Trench
著者:   Tetsuo Hashimoto and Takashi Yokota
DOI番号: https://doi.org/10.20965/jdr.2022.p1059

用語の説明

※1 Mw
 地震の規模を表すモーメントマグニチュードと呼ばれる指標。地震のマグニチュードの一種で,それぞれの地震の断層面の面積と断層のずれ量および断層の剛性率から推定されます。