要旨
平成30年9月6日に北海道胆振東部地震(MJMA 6.7)が発生し、最大震度7の非常に強い揺れとそれに伴う地すべりなどによって、死者40人を超える被害が発生しました。この論文では同地震を対象として、18地点で得られた観測データに基づく断層破壊過程の解析と、シミュレーションによる面的な揺れの再現を試みました。
まず防災科研の強震観測網K-NET, KiK-net*1の観測記録に基づき、同地震の震源断層においてどのような破壊が起きていたのかを調べました。その結果、同地震は小規模な断層破壊から始まり、その後震源よりも浅い場所(深さ25-30km)において大きなすべりを伴った断層破壊が起きていたことがわかりました。また多くの余震は本震時に大きくすべった場所とは空間的にオーバーラップしておらず、より深いところで起きていたこともわかりました。
次に断層破壊過程の推定結果と3次元地下構造モデルに基づいて、地震動シミュレータ(GMS)*2による同地震の揺れの再現シミュレーションを行いました。なおここでは周期2秒以上の地震動をターゲットとしました。観測記録との比較の結果、強い揺れが観測された石狩平野を含めて、地震動の全体的な傾向を再現できることを確認しました。
図.(左)強震記録から推定された平成30年北海道胆振東部地震の断層すべりの分布。赤い色の場所ほど本震時に大きなすべりが生じた(地震波エネルギーを強く放出した)ことを意味する。星印は破壊開始点を示す。灰色丸は本震発生後一日間の地震活動を示しており、その規模(マグニチュード)が大きいほど丸も大きくなる。破線は断層面の深さ(5 kmごと)を表す。(右)地震動シミュレーションの結果を地表最大速度(PGV)の分布で表示。比較のために強震観測網K-NET, KiK-netで観測されたPGVを三角で表示している。
学術雑誌名など発表した媒体の情報
雑誌情報: Earth, Planets and Space, 72, 20 (2020)
タイトル: Estimation of the source process and forward simulation of long-period ground motion of the 2018 Hokkaido Eastern Iburi, Japan, earthquake
著者: Hisahiko Kubo, Asako Iwaki, Wataru Suzuki, Shin Aoi, and Haruko Sekiguchi
DOI番号:
https://doi.org/10.1186/s40623-020-1146-z
備考
用語の説明